月4万円で足りる?障害者扶養共済と『遺言・家族信託』を組み合わせるべき理由

障がいのあるお子様を持つ親御さんにとって、「自分たちが亡くなった後、この子は生きていけるだろうか」という不安は尽きないものです。

その備えとして有名な公的制度が、生涯年金が支給される「障害者扶養共済制度」です。

掛金が全額所得控除になるなど税制メリットも強力ですが、知っておいた方がいいこともあります。

一生涯年金がもらえると聞くと聞こえはいいですが、この共済だけでは、親なき後の対策は十分ではないということです。専門家の視点から、見落とされがちなリスクと解決策を解説します。

1. 年齢で変わる「掛金」と、早く入るメリット

この制度でもらえる年金は、1口なら「月額2万円」、最大2口で「月額4万円」。これがお子様に一生涯支給されます。

ここで誤解されやすいのが、「いつから受け取れるのか?」という点です。これは親が65歳になったらもらえるわけではありません。

「加入者(親)が亡くなった、または重度の障がいを負ったとき」から、お子様への支給がスタートします。それまでは、親が毎月の「掛金」を支払って備える形になります。

その掛金は、親が加入するときの年齢で決まり、途中で値上がりしません。1口・2口それぞれの掛金は以下の通りです。

【親の加入時の年齢と掛金(月額)一覧】

親の加入時の年齢(4月1日時点) 1口加入(月額給付:2万円) 2口加入(月額給付:4万円)
35歳未満 9,300円 18,600円
35歳〜40歳未満 11,400円 22,800円
40歳〜45歳未満 14,300円 28,600円
45歳〜50歳未満 17,300円 34,600円
50歳〜55歳未満 18,800円 37,600円
55歳〜60歳未満 20,700円 41,400円
60歳〜65歳未満 23,300円 46,600円

さらに、「加入20年以上」かつ「親が65歳以降」になると、以降の掛金は全額免除(無料)になります。

💡 よくある勘違い:「64歳で加入すれば、すぐ免除になる?」

「65歳で免除になるなら64歳で入ればお得?」と思いがちですが、それはできません。免除には「20年の加入期間」も必要なため、64歳で入ると84歳まで払うことになります。やはり、健康なうちに早く始めるのが鉄則です。

2. 知っておくべき「障害者扶養共済の注意点」

非常に手厚い制度ですが、公的制度ならではの「落とし穴」も存在します。

① 払い損になることもあるリスク

もし親が健在なうちにお子様が先に亡くなった場合、掛金は原則戻りません(加入して1年以上経過していれば弔慰金は支給されます)。

また、親の死後にお子様が年金を受け取り始めても、受給期間が短い(受け取り始めてすぐに亡くなった場合)と赤字になります。受給期間が短くても、残金が他の遺族に還付されることはありません。必ずしも元本が保証されるわけではないので注意が必要です。

② インフレ(物価上昇)に弱い

もらえる年金は「最大で月4万円」と固定されているため、将来物価が上がった場合、お金の価値が相対的に目減りします。

③ 「だれでも申し込めるわけではない」という壁

審査されるのは「親の年齢と健康状態」です。加入できるのは親が「65歳未満」のうちだけで、さらに民間の生命保険と同じように「持病がないこと」が条件になります。持病を持ってからでは加入できないケースが非常に多いのです。

※なお、対象となるお子様は、知的障がい、身体障がい(1〜3級)、精神・発達障がいなどで永続的なケアが必要な方と定められています。

3. 「月4万円」の限界と「遺言・家族信託」が必要な理由

では、親なき後、お子様が受け取る「毎月のお金」を計算してみましょう。

※仮にお子様が障害等級1級に該当している場合として計算。

  • 障害基礎年金(1級):約8.5万円 + 扶養共済(2口):4万円 = 月額 約12.5万円

医療費の助成や税金の減免、公共料金の割引など、さまざまな公的優遇措置は用意されています。これらをフルに活用すれば、グループホーム代や食費といった日々の固定費を含めても、この範囲内でなんとかやりくりできるかもしれません。しかし、それはあくまで「最低限の生活を維持する」ためのお話です。臨時の出費や、趣味を楽しむお金を考えると、これだけでは決して十分とは言えません。

「残りは遺言書で子どもに遺せばいい」と考える方も少なくありません。中には、「障がいのあるお子様にすべての財産を遺したい」と考える親御さんもいらっしゃいます。もちろん、そのお気持ちはとても自然なものです。

しかし、遺言書で特定のお子様に財産を集中させる内容にすると、他のご家族との関係性や将来の負担、相続後の生活などを含めて考える必要があります。良かれと思って決めた内容が、かえって家族間のトラブルや負担につながってしまうケースもあります。

また、障がいの程度や生活環境によっては、お子様自身が財産管理を行うことに不安が生じる場合もあります。そこで今、大きな選択肢として注目されているのが、財産の管理を信頼できる親族等にバトンタッチする「家族信託」という仕組みです。

だからこそ、「誰に、どれだけ、どのような形で遺すか」は、一人で決めるのではなく、ご家族とも十分に話し合いながら、必要に応じて専門家へ相談しながら考えていくことが大切です。

4. まとめ:大切なのは「パズルの組み合わせ」

親なき後の真の安心は、一つの制度に頼るのではなく、以下のようにそれぞれの強みを組み合わせることで生まれます。

  • 日々の生活費:障害基礎年金 + 扶養共済

  • まとまった財産:遺言書や家族信託を活用しながら、「誰に、どれだけ、どのような形で遺すか」をご家族や専門家と相談しながら考える。

制度を知り、それを使いこなしても不安がゼロになるわけではありません。

しかし、ご本人の生活、ご家族の想い、将来の支援体制まで含めて準備していくことが、ご本人とご家族の未来を支える安心につながっていくのではないでしょうか。

「我が家にはどんな備え方が合っているのか」、「誰に何を託すべきなのか」。正解はご家庭によって異なります。

まずは、ご家族で話し合いながら、自分たちなりの形をシミュレーションしてみてください。当事務所では、障害者扶養共済の加入判断も含め、ご家族全員が安心できる「親なき後のトータル設計」の手続きをサポートしております。少しでも不安や疑問がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちらから