「少子化なのだから、定員割れの大学が減るのは仕方ない」
財務省が示した「2040年までに私立大学の約4割(約250校)を削減すべき」という提案に対し、そのように感じた方もいるかもしれません。
実際、日本では18歳人口の減少が続く一方で、私立大学数は増加し、多くの大学で定員割れが起きています。
教育の質や財政効率の観点から、「支援のあり方を見直すべき」という議論が出ること自体には一定の合理性があります。
しかし、この議論に強い危機感を示した団体があります。
社会福祉士や精神保健福祉士の養成校で構成される「日本ソーシャルワーク教育学校連盟」です。
なぜ大学再編の議論が、福祉現場の危機につながるのでしょうか。
そこには、単なる少子化だけでは語れない、日本の福祉人材の構造的な問題があります。
かつて福祉は安定した専門職だった
現在、「福祉系大学」と聞くと、人によっては難易度が高くないイメージを持つかもしれません。
しかし以前は、福祉専門職は安定したキャリアとして高い人気を持っていました。
当時の福祉は、今のような市場競争を前提とした仕組みではなく、行政が中心となってサービスや予算を支える形が主流でした。
そのため卒業生の多くは、自治体の福祉職や社会福祉協議会など、比較的安定した職場へ進んでいました。
社会的意義があり、生活基盤も比較的安定していた。
福祉は「人の役に立ちながら、将来設計も描ける仕事」だったのです。
なぜ福祉系大学は定員割れが増えているのか
問題は大学そのものではありません。
多くの若者が感じているのは、「卒業後の現場への不安」です。
2000年の介護保険制度以降、福祉業界には市場原理が導入され、事業所間競争が進みました。
制度改革自体には大きな意義がありましたが、その一方で現場ではさまざまな課題も指摘されています。
例えば、
・責任の重さに対して給与水準が低い
・専門性が十分評価されにくい
・キャリア形成が見えにくい
・慢性的な人材不足が続いている
こうした状況の中で、多額の奨学金を借りてまで福祉系大学を選ぶ若者が減るのも無理はないのかもしれません。
「定員割れだから削減」で解決する問題なのか
補助金の効率化という考え方自体は理解できます。
しかし、定員割れという数字だけを見て、福祉系大学まで一律に整理することには慎重さも必要です。
地方大学は単なる教育機関ではありません。
地域で育ち、地域で働く人材を育成する役割があります。
もし地域の福祉養成校が減れば、今後さらに人材不足が深刻化する可能性があります。
日本はこれから2040年問題を迎えます。
高齢化が進み、支援を必要とする人は増える一方で、支える人材は減少していきます。
いま議論されているのは、大学の数ではなく、地域社会を支える基盤の問題とも言えるかもしれません。
まとめ:必要なのは大学削減ではなく構造改革
大学だけを減らしても、根本的な問題は解決しません。
本当に必要なのは、福祉専門職が専門性に見合う待遇やキャリアを築ける仕組みづくりではないでしょうか。
入口だけを狭めても、出口が変わらなければ同じ課題は繰り返されます。
数字や効率性は大切です。
しかし、人を支える仕組みは数字だけでは測れない側面もあります。
今回の私大削減案は、大学の話ではなく、私たち自身の未来の問題として考える必要があるのかもしれません。

