「死後事務」が社会福祉事業へ。高齢者支援と行政書士の役割

厚生労働省は、身寄りのない高齢者の生活支援や死後の手続きを強化するため、「社会福祉法」などの一括改正案を今国会に提出する方針を固めました。

この改正は、私たち行政書士が日頃取り組んでいる「遺言・相続」「成年後見」「死後事務委任」の実務に極めて大きな影響を与えるものです。今回は、このニュースの内容を紐解きながら、これからの高齢者支援の在り方について考えてみたいと思います。


1. 改正案の柱:死後事務が「社会福祉事業」に位置付け

今回の改正案で最も注目すべき点は、「死後事務」などが新たに「第二種社会福祉事業」に位置付けられることです。

これまで、身寄りのない方の葬儀、埋葬、遺品整理、公共料金の支払いといった「死後の手続き」は、主に民間の契約や自治体の善意の対応に委ねられてきました。 これが法律上の「社会福祉事業」と定義されることは、国が「死後のサポートも福祉の重要な一環である」と明確に認めたことを意味します。今後、社会福祉協議会(社協)や社会福祉法人が、公的な裏付けを持ってこれらの業務へ参入する流れが加速するでしょう。

2. 現場の懸念と「透明性」の確保

一方で、慎重な意見も上がっています。特に懸念されているのが、「営利法人による死後事務への参入」です。

財産が絡む死後事務において、不正請求や不適切な運営が行われるリスクは否定できません。身寄りがないという「弱み」に付け込む業者が現れないよう、厳格な選別や透明性が求められています。

ここで重要になるのが、私たち行政書士の存在です。 行政書士は国家資格者として厳しい倫理規定に縛られ、公正中立な立場で契約書を作成するプロです。公的支援が整う中で、いかに「透明性の高い契約」を構築し、ご本人に安心を提供できるかが問われています。

3. 「専門家はいるが、動ける人がいない」という空白地帯

現在、成年後見などの現場では司法書士の先生方が多く活躍されています。しかし、現場ではある「課題」も浮き彫りになっています。

司法書士の本業は不動産登記などの法的書類作成であり、長期間におよぶ高齢者支援は、ビジネスとしての効率性や責任の重さから、敬遠されがちな側面があるのも事実です。 また、過去には一部の専門職による財産着服といった不祥事もあり、これが「真面目な実務家ほど、重すぎる責任に二の足を踏む」という状況を生んでいます。

結果として、「専門家は存在するが、実際に動ける担い手が不足している」という地域の空白地帯が生じてしまっているのです。

4. 「福祉×士業」の連携が不可欠な時代へ

今後は、以下のような役割分担による地域ネットワークの構築が不可欠になります。

  • 社会福祉協議会: 相談窓口となり、支援が必要な人をつなぐ(トリアージ)。

  • 社会福祉法人: 実際の介護や日常生活の支援を担う。

  • 行政書士等の専門職: 契約書の作成、任意後見の受任、死後事務の執行など、「法的スキームの構築」と「権利擁護」を担う。

人材不足が深刻な自治体において、私たち外部の専門家が「実務の担い手」や「チェック機能」として連携していくことは、もはや避けて通れない課題です。


行政書士として、地域の安心を支えるために

今回の法改正案は、5月にも国会で審議が始まります。 私たちは単に「書類を作る」だけでなく、身寄りのない方が抱える「自分の死後、誰が手続きをしてくれるのか」という根源的な不安に向き合わなければなりません。

当事務所では、身寄りのない方の生前契約や死後事務に関するご相談を承っております。法改正の動向を踏まえ、一人ひとりに寄り添った安心の形をご提案いたします。

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